言葉をめぐる旅 plus CRT-D

じぶんの病気の付き合い方を考えるブログ

霧の中を歩く [入院 #06]

起床。朝食。処方薬を飲む。医師の回診。薬の点滴(午前中に1回)。昼食。薬の点滴(午後に1回)。夕飯。処方薬を飲む。就寝。入院してからの病院での毎日のスケジュールだ。病院の就寝時間は夜9時と決めれている。普段の日常では寝る時間はだいたい夜中12時前後だったので、ベッドに横になってもなかなか眠れない。他の患者さんの、監視するために備え付けられた医療機器から発する音。看護師が病室に出入りする時の音。病室の時計の音。病院に面した道路を通る車の音。夜半、何度も目が覚める。病室の自分のベッドは窓際であった。立ち上がり、窓の外を見る。病院の深夜は、病棟の5階から見下ろす真夜中の風景、病室内の様子、自分が使っているベッド等が、病院にいる病人の自分自身の状態を改めて認識させてくれる。延々と夜明けを待つ。思い出せる言葉は増えてきたが、人と喋ったり、文章を書いたり、脳梗塞を発症する前の言葉の状態にはとても覚束ない。医師や看護師に体の状態を伝えようにも喋ることができない。メールで家族に用事を伝えたいが、文が思い浮かばない。言葉で伝えようと思考するが、途中で頭が疲れてしまう。霧の中を歩く。思考中、頭の中はそんなイメージだ。霧の中、言葉をさがし、目の前に出てきた言葉をつかむ。その言葉をどう繋ぎ合わせるか。それは言葉として正しいのかどうか考える。その繰り返しの作業が頭の中を疲れさせ、なんともやりきれない気持ちになっていく。言葉を発することがこれほど困難なことかと...。