言葉をめぐる旅 plus CRT-D

じぶんの病気の付き合い方を考えるブログ

言葉で考えることができない世界 [入院 #03]

あの時の自分自身の状況はこうだ。耳鳴りが酷い。右手足が痺れ、右手で物を掴んだ時に触感が薄れている。他人喋っている言葉や新聞等に書いてある文章は理解できているが、言葉を喋ろうすると...。頭の中で言葉を思い浮かべることができない。全くもって昨日までいた日常の世界から「言葉で考えることができない世界」に連れて行かれたのだ。とにかく会社を休もうと思った。出社定刻時間前には電話連絡をせねばと携帯電話を手に取った。だが、体調不良であることを報告をどう話せばいいのか、どう伝えればいいのか。メールで伝えようにも言葉そのものをキーボード入力することができない。(この時は「会社」「休む」という言葉も頭に思い浮かなかったので、それは頭の中のイメージした状況説明である。)言葉を思い出せと数十分ほど苦しんだが、その言葉は思い浮かばない。「言葉を失う瞬間」という言葉の表現はあるけれど、自分にとってそれは「瞬間」ではなく、失われた言葉をさがす、経過していく時間であった。出社時間を過ぎ、会社から自分の携帯に電話がかかってきた。