言葉をめぐる旅 plus CRT-D

じぶんの病気の付き合い方を考えるブログ

失語症を振り返る

脳梗塞により、失語症になって、5年経ちました。脳梗塞の再発は今のところはありません。言葉もある程度は良くなり、人と会話するのに困らなくなりました。リハビリ病院に入院していたことも遠い昔に思えるようになりました。ただ、いざスピーチするとなると、何らかの訓練が必要だなと感じています。今は会社も辞め自宅にいるので、人前でスピーチする機会はほとんどありません。今後、もしそんな場面があったら、その時はその時で、覚悟を決めるしかないと思います。

失語症という病気で話をすることができない」

20149月、脳梗塞になって市立病院に入院した時、言葉に関する専門のセラピストがいる病院を紹介されました。1カ月後にリハビリ病院に転院、半年間、言語聴覚士から受けたリハビリに関しては、何年経っても未だ忘れることはできません。当時の日記、リハビリで使ったテキストやノート等を時々見返します。

入院当初、言葉が回復に向かうなら、そのリハビリを行うことは、自分にとって恥ではないと思い込んでいました。病院で治療を受ければ短期間で何とかなるだろうと思っていました。失語症になると、人によっては病状は様々ですが、言葉で思考することが困難になります。私の場合は、言葉のもつれ、単語を思い出せない、九九の一部を忘れる、計算の速度が遅い、話を聞き取る力の衰え、新聞なども読むことはできるが、理解する速度は遅くなる、何よりも他人と会話することがうまくできない状態が、入院して3カ月経った頃まで続きました。

リハビリには希望を持って懸命に取り組んでいたのですが、その反面、会社に戻って復職など無理であろう、人とのコミュニケーションを会話で行うことなどは、もう二度と出来ないので、そういうビジョンは捨てた方がいいと、思っていた時期もありました。自分の失語症を受容することはできたけれども、諦めずにどんな方法を考えればいいかなどと、そんな展望を考えることは、その時はできなかったのです。全く、切羽詰まった状態でした。

言語聴覚室でST(言語聴覚士)のリハビリや、病室でテキストを開き、勉強している時、日々の課題をノートに書いている時、その場面を今も鮮明に思い出せます。

4カ月程経つと、少し希望が見えてきました。若干ながら日記が書けるようになったり、たどたどしいが家族と話ができるようになったり、リハビリの効果が出てきたような気がしました。

私の場合、リハビリ病院の規定、最大入院日数180日が適用され、仕事も休職し、約半年間入院できました。その環境で言葉のリハビリを集中して受けることができ、これも本当に家族の理解があってこそだなと、今さらながら、感謝の念に堪えません。

諦めないで、コツコツとリハビリに打ち込む。自分自身を振り返った時、まだまだ回復の余地があると、希望を持って取り組む。数年前に感じた、その心がけを今なお忘れないようにしています。